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2007年02月14日 水曜日

ことばと文化(鈴木孝夫著)

 言語と文化の関係を分かりやすく書いた名著です。
 実はこの本は高校生の時に読み、非常に感動しましたことがあります。
 それからウン十年が経った今、どのような感想を自分が持つのか、とても興味深くページをめくり始めました。

 普段全く意識せずに使っている「言葉」ですが、その裏側には様々な文化的な要因が隠されています。
 例えば、「beautiful」は「美しい」と訳されるため、日本人は外国人が「beautiful」と言っている時、日本での「美しい」という概念で「beautiful」を解釈します。
 しかし実は文化が違えば、両者の意味する範囲というのはかなり異なったものなのです。

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 また、「物が先にあって、そこに名前が付くのではなく、名前を付けることによって物ができ上がる」という考え方も(少々哲学的ですが)とても興味深かったです。
 時計、カメラ、鼻、電話、海、雲…、なんでも名前があてがわれることによって初めて存在するのであり、もし言葉がなければ渾沌とした世界があるだけなのです。
 これは、物ではなく概念的なものならなおのことでしょう。
 そして、ここでも名前がつけられる基準、範囲などは文化によってかなり異なってくるのです。

 唇とripは日本と西洋ではその範囲はだいぶ違います。机、座卓、table、deskのそれぞれは、日本や西洋の文化様式をそのまま反映し、その意味する範囲も異なります。カレーと言っても、インド人と日本人ではその内容はだいぶ違っているかもしれません。
 言葉というのは文化を映し出す鏡のようなものと言えるのです。

 また、後半では人を指し示す言葉について詳細な考察が行われており、これも非常に面白かったです。
 我々日本人が自分や相手を示す時に使う人称名詞は、西洋などの外国とかなり異なっています。
 一人称は英語ではIですが、日本語では”相手によって”僕、私、お父さん、お母さん、おばさん、先生など実に様々に変化します。
 また二人称も、あなたという言葉が使われるのはきわめてまれで、お父さん、先生、お姉さんなど、相手の立場を示す言葉が使われるのです。

 そこでは

1)現在の日本語には、目上の人に対する二人称は存在しない
2)「貴様」という言葉がかつては相手に対する敬意を持ったものだったが、時間が経つにつれて見下す言葉になったように、全ての人称代名詞はだんだんと格を落としてゆく。これは日本においては本来人称代名詞を使うのはタブーであることが原因になっている
3)日本人が自分や相手を呼ぶ時、それは常にその場にいる(いないこともある)最年少者から見た立場の呼び名を使う。例えば自分の娘と孫がその場にいるとき、娘のことを「ママ」と呼んだり、孫のことを「わたし」と呼ぶ。

 と言ったとても興味深い現象が見られると書かれてありました。

 個人的には、英語で会話をする時、年下でも先生でも皆一様に「you」と呼べることにちょっとした解放感を感じます。

 普段気にすることはありませんが、こういったことに興味を持ち、わくわくするのはとても気持ちの良いことだと思いました。
 知的好奇心をくすぐってくれる一冊でした。

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[番外 > 読書 ]: 2007年02月14日 23:21:メインに戻る pagetop

コメント

うーん。今日もなかなか興味深い内容です。
 私も外国に長く住んでおり、日本語を使う機会が限られてしまっているのですが、日本の人から最近指摘されたことがありまして、私は人と話すときによく「あなた」という呼びかけを頻繁に使っているらしく、それだけで日本に住んでいない日本人というのが明らかになると言われました。
 というのも(その人によれば)日本人は人との関係を、ファジーにしたがる傾向があるからということでした。
 また、ドイツ語は、最近思うのですが、いい訳とか、批判とかする場合に非常に使いやすい言葉の一つとおもいますね。というのも一人称を特定させない文が成り立つし、そういう言い方が一般的なために、だれでもどこでも何でも言いやすいのです。
 だから議論好きがおおいのかも。

投稿者 さんぼ : 2007年02月15日 01:57

なるほど〜!!
私は常々、外国人同士でも同じような道具を使って、同じような生活形態で暮らしていることが不思議でならなかったのですが、確かに文化的背景が違うとその意味合いは違って来るよね。そこにそれぞれの深みが出るのでしょうね。

最近、本の紹介も書いてて、面白いですね。
本好きなので、また掲載待ってます。

投稿者 goltama : 2007年02月15日 02:33

>さんぼさま
 海外からの貴重なご意見有り難うございます。
 外国にご在住されていると、日本語の特徴がよくわかるのでしょうね。
 たしかに日本語で「あなた」と言う機会というのは妻が夫に言う時以外はかなり少ないと思います。
 日本語の会話は、相手から見た自己の立場を規定するところから始まると言います。
 素晴らしい日本の文化とも言えるでしょうし、(特に国際間での)コミュニケーションを阻害する可能性もあるのでしょう。

 ドイツ語というのは一人称を特定しない会話がしやすいのですね。とても興味深いです。
 言葉と文化は密接なんですねー。

>goltamaさま
 コメント有り難うございますヽ(^。^)ノ
 そうなんです。意味が同じだろうと思って使っている言葉って、実は文化が違うとかなり指し示す範囲が違うようなんです。
 面白いですよねーー。

 goltamaさまもいろいろ本読んでいるようなので、紹介期待していますね(^_^)

投稿者 モカ : 2007年02月15日 14:37

モカさん、こんにちわ!

私事ですが、娘が第一志望の中学に合格できました。田舎から2学期に東京の小学校に転校してきてからの受験勉強でしたから、時間的に相当厳しかったのですが、なんとかギリギリ間に合いました。「今年の理科は天体」とヤマをかけたのがズバリ当たりました。(苦笑)
それにしても、空を見ただけで、地球の自転・公転とか、北極星は地軸を北極の上に伸ばした線が天球と交わる点にあると考えるとたえず真北にあり移動しない、北極星の高度=その地点の緯度、とか考えついた人は、つくづく、すごいと思いますね。

投稿者 the-hair-of-the-dog : 2007年02月15日 18:16

モカちゃん

相変わらず、理知的だね。
今回も貴重な本をありがとう。

個人的には、哲学的な
>「物が先にあって、そこに名前が付くのではなく、名前を付けることによって物ができ上がる」
という部分が興味を引くし、理解できるような気がします。

投稿者 哲学@みっちゃん : 2007年02月15日 23:04

>the-hair-of-the-dogさま
 ご令嬢の中学合格おめでとうございます!!
 きっとすごい学校なのでしょう。
 将来を期待しています。
 天文学はいいですねー。物理であり、芸術であり、哲学であり、ロマンだと思っています。

>哲学@みっちゃんさま
 私もその部分がとても気に入りました。
 当たり前と思っていることでもいろいろな意味や解釈が隠されているのですね。
 お料理の名前も自分でつければ、その瞬間に新しい料理が生まれます(^_^)

投稿者 モカ : 2007年02月16日 12:39

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